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福島家庭裁判所 昭和46年(家)64号 審判

事件本人(後見人) 浅川俊夫(仮名)

被後見人 大塚規雄(仮名) 外一名

主文

事件本人浅川俊夫が被後見人大塚規雄、同大塚和夫の後見人であることを解任する。

審判費用(証人杉浦一男、同田上幸之助、同松原徹、同村田喜一、同大塚規雄、同安井兼次に支給した旅費日当等の合計金六、六七一円)は事件本人の負担とする。

理由

調査の結果によると、

一  被後見人大塚規雄同大塚和夫の父大塚安太郎は昭和四〇年四月一二日に、同母ソメは同四三年六月二二日にそれぞれ死亡したため、いずれも後見が開始し、事件本人が同四四年六月一一日上記両名の後見人に選任せられ、その職に就いたこと、

二  事件本人は、昭和四五年三月一三日、福島市役所○○支所で、被後見人大塚規雄の法定代理人として、同被後見人のいる場所で、同被後見人が福島県から交付されることになつていた福島県開拓者離農助成金五〇万二、六九五円(同助成金は金五五万円であつたが政府資金等合計金四万七、三〇五円を差引かれたため)及び上記被後見人両名の法定代理人として、村田喜一から受取ることになつていた被後見人大塚規雄が離農した被後見人両名共有の土地売却代金の残金三〇万円合計金八〇万二、六九五円をそれぞれ同県、村田喜一からいずれも受領し、その内同所で、被後見人大塚規雄に電話代として、金一万円を交付し、結局七九万二、六九五円を所持していたこと、

三  然るに、事件本人は、上記日時受領した金員は上記助成金五〇万二、六九五円であると主張し、これを基本として、被後見人等に生活費、修学旅行費等合計金四〇万六、九三三円を支払い、残金は金九万五、七六二円しかないと固執し、これを現金として所持していること、

四  従つて、事件本人は、実際に金八〇万二、六九五円を受領しながら、これを否定して、金五〇万二、六九五円しか受取つていないと主張するものであり、被後見人大塚規雄が事件本人から受けた金一万円を上記各金額の差から引くと、金二九万円が不明であつて、これについては、事件本人が正当に支出した資料が得られないから、その頃、事件本人の住所等で隠匿して横領したものと推測できること、

が認められる。

以上の事実は、被後見人大塚規雄に対して、民法第八四五条の後見人に不正な行為があるときに当り、被後見人大塚和夫に対しては、同法条の後見の任務に適しない事由に該当するものといわなくてはならない。

よつて、事件本人が未成年者大塚規雄同大塚和夫の後見人であることを解任するのを相当と認め、参与員小林周の意見を聴き、審判費用の負担につき家事審判法第七条非訟事件手続法第二七条第二八条により主文の通り審判した。

(家事審判官 早坂弘)

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